2012年4月27日金曜日

EpicMixをご存知ですか?

米コロラド州にVailというスキーリゾートがある。

毎年、何万というスキーヤーやボーダーがウィンターバケーションを楽しむ。そして、彼らはそのパウダースノーの経験を他のスキーヤー、ボーダーに伝えたくて、話したくてうずうずしている。

ということで、Vailは彼ら彼女達のうずうずを晴らし、Vailの体験を広め、共有してもらえる可能性を活用することにした。

Vailリゾートには数多くのダウンヒルルートがあり、もうそれはモバイル体験そのものだ。そこで、RFIDを仕込んだスキーパスと、パスホルダーが利用・通過するリフト・ゴンドラの乗降場所や、ルートの頂上や途中で、どのルートをたどったのか、標高、日付、滑走日数などをチェックし、それを収集するデバイスを作った。

その模様はビデオをどうぞ。



結果がWOMMAのケーススタディとしてまとめられている。曰く、
  1. 2010年12月からこのシステムの運用を開始し、10万人近くがシステム登録を行い、アカウントを稼働させた
  2. 38,000人がアンドロイド、iPhoneアプリを利用した
  3. 3,500万ソーシャルインプレッションを獲得した。
出典:WOMMA ケーススタディ:Vailリゾート
注:2010年9月とするデータもある。

もう少し説明すると、Vailが稼働させたのはEpicMixというシステムだ。このリフト券兼用のEpicPassをポケットに入れておき、あとは滑るだけで、その日の滑走標高差、乗ったリストの数、場所を記録してくれる。後は、PCやスマホで自分のアカウントにログインすると、 全てがチェックできるシステムとなっている。

その結果に応じて、滑った回数や累積標高、乗ったリスト数、訪れたリゾート数、アカウントにアップした写真数などに応じてポイントやバッジが与えられたり、ランキング順位がわかるシステムとなっている。このバッジは、FourSquareのように称号をもらえるため、それをコレクションするためだけにゲレンデに通うユーザもいる。

このシステムのすごい所は、アカウントを持っている友人であればゲレンデの何処を滑っているかがわかったり、自分のFacebook、Twitterアカウントへ累積標高やランキングを発信できることだ。スキー、ボーダーというウィンタースポーツに、RFIDとソーシャルメディアを組み込むことで体験を共有することができるシステムだということだ。


このEpicMixは、Clio Awards 2011でシルバー賞を受賞している。滑った距離や乗ったリスト回数といった記録というだけなら、Nike+ のアプローチと似ているが、仲間や友人達との体験共有を組み込んでいる処が頭ひとつ抜けている点だろう。

EpicMixを使っているプレイヤーのランキングを見てみる。


そのトッププレイヤーであるCharles Aのパフォーマンスを見ると、2011/2012シーズンの累積標高差は745万ft、リスト回数4,228、ゲレンデ日数167日とある。


これだけのパフォーマンスをたたき出しているスキーヤー(ボーダー)は当然だが、土日スキーヤー(ボーダー)でも今シーズン、どこに行き、何回リストに乗り、どれくらいの標高差を滑り、写真を何枚撮り、ポイントは何点で、といった情報を自分のFacebookやTwitterから発信し、家族や友人、同僚たちとコミュニケーションするのは楽しいはずだ。

今シーズンのEpicMixは、Vailリゾート全体に12名程度のカメラスタッフを配置し、スキーヤー(ボーダー)の写真を撮るサービスもやっている。EpicMixにアップされた写真は各ユーザが自分のアカウントに出すだけではなく、FacebookやTwitterにも投稿できる。旅の思い出、滑りの記憶を多くの人々と共有できるサービスだ。高解像度の写真は20㌦だが、それ以外の写真は無料だ。

こんな面白いサービス、EpicMixをやっているスノーリゾートが北米にはあります。

2012年4月26日木曜日

モバイルアプリのヒント

レイクタホー・アプリをフォローした処、間髪をいれずにDM(ダイレクトメッセージ)が飛んできた。


モバイルアプリの案内だ。

通常、リゾートが無料で提供しているモバイルアプリだと、
  • ニュースや天気予報
  • 宿泊施設関連ニュース
  • リゾートまでのアクセス
  • リゾートのイベントニュース
  • それらをFacebookやTwitterで共有する
  • FourSquareでチェックインする
といった機能がある。

レイクタホー・アプリには、それに加えて、
  • 地元 の特売情報
  • 近場の割引情報(メーリングリストに登録し、現在位置を収集させることが前提)
を提供する機能もある。ただし、この二つは今後、提供を予定していますというご案内なので、今はまだ使えない。

ユーザはいつもリゾートにだけ興味、関心をいただいているわけではないので、リゾートの地元や、自分の近場の格安情報をゲットできれば、このモバイルアプリを使う目的が増える。

「こういった格安情報を提供するプロバイダーを束ねて、各種モバイルアプリに流し込み、それを各リゾート、集客施設のモバイルコンテンツのひとつとして提供する」というビジネスがすでに立ち上がっているということになる。

リゾート、水族館・動物園が単体で提供するわけにはいかないが、こんなアプローチも検討されてはいかがでしょうか?

2012年4月25日水曜日

テネシー水族館のIMAX 3Dシアター

テネシー水族館が下のツィートをしていた。


IMAX 3Dということなのでアクセスしてみると、内容ははっきりと分からないが、竜巻、サンゴ礁、北極の生きものなどをフィーチャーした3Dムービーが見られるらしい。曜日によって変わるが、毎日、10~12回は見られるようだ。


このIMAX 3Dチケットは、子供が$8.50、大人が$9.99となっている。なぜ水族館でIMAX 3Dがこの値段で見られるかというと、Yellow Page(AT&T)がスポンサーとしてついているからだ。


これを日本でそのままマネするのは難しいかもしれない。しかし、市役所のWebページに企業広告を掲載する処もあることを考えれば、まったく不可能ではないのかもしれない。どういったコンテンツ、プログラムをどういったスポンサーに提案するかという話になればいいのだが...。

2012年4月24日火曜日

バーチ水族館のサマーキャンプ告知

カリフォルニアのバーチ水族館へアクセスしてみた。

トップページには、3つのミッションが掲げられ、5つのアナウンスが自動でループしている。

その中に、4歳から15歳までを対象にして、6月25日から8月24日まで行われるサマーアドベンチャーキャンプのアナウンスがあった。大体4日から5日間のプログラムで、費用はおおよそ$168~$395まで。


学齢別にプログラムがあり、合計で12プログラムがある。ホエール・ウォッチング、産卵のため海岸に押し寄せる小魚の観察、サメをもっと知ろうなど、館内もあるが野外学習的なプログラムが紹介されている。

海や湖、川に住む様々な生物を見たり、その生態や環境を学ぶ場所ではあるけれど、その水族館の担当者が利用者と一緒に館外、屋外でサマーキャンプまでしてくれるプログラムを提供しているというのはあまり聞いたことがない。「こんなプログラムがあったら行きたかったな」と思うし、「行きたい!!」と大声を出す子供の姿が目に浮かぶ。

バーチ水族館には、サマーアドベンチャーキャンプ以外にも、大人向けプログラム、アウトドアアドベンチャー、ファミリープログラム、バースデーパーティなど様々なパブリックプログラムが用意されている。こういった形で、バーチ水族館は利用者に近づき、体験を共有してもらう方法、マーケティングを実践している。

日本では水族館や動物園のバックヤードツアーが人気だが、園外・館外での泊りがけ夏休み体験授業的なプログラムはあるのだろうか?もし、なければ是非、検討してほしい。

そして、バーチ水族館には、サマーキャンプという実体験を共有した子供たちにそれを発信してもらえる仕組みまでは用意していないようなので、そこを掘り下げたプログラム開発をお願いしたい。

2012年4月23日月曜日

日本の美術・博物館の50%は新しいことに挑戦していない?

Museum and the Web2012で、「People's Choice」と「Museum Professional」賞を受賞したMuseum Analytics(beta)による、「2010年世界の美術・博物館ランキング」を入場者数別に見ると、ルーブルが850万人でダントツの1位、大英博物館は584万人で2位、メトロポリタンが522万人で3位となっている。

トップ20位には欧米の有名美術・博物館が並んでいるが、9位に韓国の国立中央博物館、13位にロシアのエルミタージュ美術館、14位にブラジルのCCBBが来ている。日本はと言うと、国立新美術館が 203万人で17位となっている。(下図は分かりにくいのでクリックしてオリジナルを見てください。そして、「Offline」順に並べ替えてください)


ま、観光地と化している著名美術・博物館に太刀打ちできるわけもないが、上位20位までの美術・博物館でFacebookも、Twitterもやっていないのは日本の国立新美術館だけだが、話はそれで終わらない。

日本からは合計14の美術・博物館が登録されているが、国立西洋美術館京都国立近代美術館奈良国立博物館東京国立近代美術館横浜美術館京都市美術館はFacebookも、Twitterもやっていない。

それに比べると米国(ランクされている館数1,384)、英国(200)、スペイン(56)、カナダ(96)、イスラエル(4)、スウェーデン(34)、デンマーク(9)、メキシコ(15)、コロンビア(3)、ニュージーランド(18)、カタール(2)、ポーランド(5)、アイルランド(9)、ギリシャ(5)、ノルウェー(8)、フィリピン(3)、ペルー(1)、オーストリア(12)、ハンガリー(4)、チェコ(2)、インド(1)、香港(1)は、すべてFacebookとTwitterの両方、あるいは少なくともどちらかを運用している。
(Museum Analyticsは3,000館以上をリストアップしているが、ベータ版ということで、国、都市が未分類の館がまだ多い)

ロシア(13)、仏(28)、豪(49)、独(58)、ポルトガル(26)、ベルギー(14)は、1か所だけがいずれもやっていない。韓国(5)は2か所、イタリア(34)は9か所、オランダ(165)は11か所、トルコ(5)は2か所、中国(2)は2か所がいずれもやっていない。

日本、ロシア、仏、豪、独、ポルトガル、ベルギー、韓国、伊、蘭、トルコの美術・博物館のいくつかは、FacebookおよびTwitterというソーシャルチャネルの恩恵に浴していないということだ。

これらの美術・博物館は、他の美術・博物館が入来場者に加えて、MOMAのように100万人以上のFacebookファンや97万人以上のTwitterフォロワーを抱えて、ダイレクトなコミュニケーションをしているにもかかわらず、新しいオーディエンスに彼らのスペースで語りかけることも、コンテンツを共有してもらうこともしていないことになる。

「特に日本は、中国の100%に次いで50%の美術・博物館が新しいことに挑戦していない」と書くと大げさで的外れになる。だが、中国からFacebook、Twitterができないことを考えると、日本の比率は他国に比べて異常に高いと言わざるを得ない。

このMuseum Analytics(beta)でカウントされていない、例えば、@MOMAT60th(東京国立近代美術館 開館60周年)といったアカウントもある。しかし、それは他国の場合も同じだろう。

年間50万人、100万人、200万人が入来場しているからそれでいい、ということには絶対ならない。ということを理解しているからこそ、他国の美術・博物館は、手間暇、時間、予算、人的リソースを割いてソーシャルメディア対応を行っている。それに引き換え、日本の美術・博物館は遅れていると言わざるを得ない。

ガラケーと同様にガラミュー(ガラパゴス・ミュージアム)という言葉が独り立ちし、独り歩きをしないように期待したい。

2012年4月20日金曜日

ホイットニー美術館のビデオブログ

ホイットニー美術館のビデオログ(Vlog)が、Museum and the Web2012のオーディオ/ビジュアル/ポッドキャスト部門の最優秀賞を獲得した。

もう、これは見ていただくしかない。まず、Vlogのイントロダクション。

修復作業に関するVlog。

聴覚に障ガイのある美術館の教育担当者が手話で様々なテーマ、例えば特定の作家、展覧会、インタビュー、収蔵作品に関して語りかけてくれる。

これまで行ってきたホイットニー手話プログラム(聴覚に障ガイのある 美術館の教育担当者を伴った手話ツアー)に多くの参加者を集めている実績から手話ニーズの高いこと、聴覚障ガイコミュニティへの貢献度が高いことを判断し、2011年2月からVlogプロジェクトを開始したそうだ。

毎月新作をリリースし、聴覚障ガイコミュニティだけではなく幅広いオーディエンスにも受け入れられ、初年度にマーケティングや広告キャンペーンもなく、15,000PV(ページビュー)を稼いでいるということから、オーディオ/ビジュアル/ポッドキャスト部門の最優秀賞に輝いたことがうなずける。

素晴らしい取り組みに拍手を送りたい。

日本でも人間国宝美術館真鶴アートミュージアムが共同で「出張美術館」をやっているし、和歌山県立博物館は「さわれる資料を活用した博物館のユニバーサルデザイン化事業」をやっている。

出典:読売新聞 出張美術館に手応え
出典:和歌山県立博物館ニュース

多様なオーディエンスのニーズに沿ったアプローチは、広いすそ野を育成し、新しいコンテンツが新しいコミュニケーションチャネルとオーディエンスを増やしてゆく。

こんな右肩上がりの想定をするためには、多様なオーディエンスのスペースに参加しなければならない。ただそれだけなのだが...。

2012年4月19日木曜日

美術・博物館に必要なマーケティングを考える前に

昨日の「美術・博物館にもマーケティングは不可欠」にちょっと賛同をいただいたので、じゃあ、どんなマーケティングが必要かを考えてみる。

大新聞社やその他有名どころの後援をつけて膨大なレガシーメディアでの露出を稼げる展覧会・企画展をやれる著名、大規模な美術・博物館は限られている。

普通の美術・博物館は、限られた予算の中で、媒体広告、屋外広告、交通広告を検討し、パンフ・チラシ・リーフレットの類を印刷し、市の広報誌と一緒に配布してもらったり、館内や窓口あたりや市の関連施設においてもらう。折角、Webやメルマガ、ブログをやっているからと、そこからアナウンスするぐらいがせいぜいになる。

「いやいやまだまだいろいろとあります」という声が聞こえてきそうだが、本当は「どんなマーケティングが必要かを考えてみる」前に、まず、美術・博物館のオーディエンスはどんな人たちなのか、どんなメディア・コミュニケーションツールを使っているのか、何が彼ら・彼女たちのアンテナに引っかかっているのか、を知ることが先になる。

テート美術館のソーシャルメディア・コミュニケーション戦略の前文に以下がある。
テートオンラインの目的は、英国および世界の現代美術の理解を深めるというテート美術館のミッション完遂を支援すること。テートオンラインは急速に拡大 し、可能性の大きなデジタルコミュニケーションを背景として、新しいやり方で新しいオーディエンスにリーチし、エンゲージする。

テート美術館を体験するオーディエンスを確保し、育成し、その幅を広げたい。現在の利用者から将来の新しいオーディエンスを育成したい。特に、より幅広い若年層にフォーカスしたい。
こういった現状認識なしに、これからのマーケティングを考えることはできないし、無理がある。

参考:テート美術館のソーシャルメディア・コミュニケーション戦略

平成23年度の情報通信白書によれば、余暇行動のなかで「パソコン」がトップを占め、「動物園、植物園、水族館、博物館」は7番目になっている。
そして、情報メディアの利用時間を見ると、平成17年はテレビ、新聞の順だが、平成22年にはテレビに次いでパソコンが2位に食い込んできている。
白書では、「総じて余暇としてのインターネット利用の比重が高まってきていることが分かる」と記している。

出典:平成23年情報通信白書

米国では2002年に比べると2008年時点では、過去12カ月間に美術・博物館へ足を運んだ人が5%ポイントも減っているという事実を明らかにした調査がある。
出典:米国 National Endowment for the Arts

英国でも米国同様に、美術館・博物館へ足を運ぶオーディエンスが減少傾向を示しているのではないだろうか?

デジタルコミュニケーションの爆発がこれまでの前提を変革している、その中心となっている新人類的なオーディエンスにリーチし、エンゲージすること、そこから新しいオーディエンス層の育成を行わなければ...、という認識と危機感があればこそ、テート美術館のソーシャルメディア・コミュニケーション戦略があると考える。

通常メディア、レガシーメディア、既存マーケティングの効果と限界を踏まえ、新しいオーディエンスと彼らが活用しているコミュニケーションツール及び新しい(ソーシャル)メディアを活用することで海図のない航海に踏み出さなければ、これまで通り、いつか来た小路を行き来するだけになる。そして、この小路が袋小路になっているという危機感がテート美術館を揺り動かしたと考えるのは的外れだろうか?

まず、こういった現状認識と危機感を共有することが、次の、これからのマーケティングを考える前提になると思うが、あなたはどう考えられますか?

2012年4月18日水曜日

美術・博物館にもマーケティングは不可欠

Birch水族館が下のようなつぶやきをしていた。


短縮URLで見てみると、まさにゴッホの画のようだ。



余談だが、ゴッホ美術館のTwitterアカウントに、「@Birch_Aquariumがゴッホの画のようだと言ってるよ」とつぶやいてみたけど返事はない。返事が来るかもしれないと、ちょっと期待していただけに残念。

多分、ここがポイントだ。Twitterユーザはちょっとしたことに期待しているが、美術・博物館側はそんな暇がないので対応しない。会話の糸口は開いているのだが、会話がつながり、広がることがない。

ここをなんとかしなければ、美術・博物館は待ちの営業を続けるだけになりユーザの本当のスペースに参加することができない。当然、「来てください」や「始まりました」と連呼するだけでは、ユーザの耳には届かないし、行こうというアクションを促すことができない。

美術・博物館にもマーケティングというマインドが不可欠になっている。それを理解している美術・博物館やマーケティング会社はすでに行動に移している。Google.comで、"Museum Marketing"を検索すると11万件以上がヒットするのは不思議でもなんでもない。

カナダの自然史博物館には、Jeff Gray, Curator, Marketing and Communicationsがいる。ハーバード美術館には、Jennifer Aubin, Public Relations Managerと、Antoinette Hocbo, Marketing Assistantがいる。スタッフリストを公開しているところはあまりないので、この2館しか見つけていないけれど、他の美術・博物館にもマーケティングやコミュニケーション、広報のマネージャがいるはずだ。そういった業務の必要性を認識し、外部から中途採用している施設もあるはずだ。

日本でも南山大学 人類学博物館 学芸員の手塚朋子さんが「もし学芸員がコトラーのマーケティング・マネージメントを読んだら」を書いている。残念ながら、まだ読む機会に恵まれていないが、多分、いや、必ず、マーケティングの重要性を説いておられるはずだ。

2012年4月17日火曜日

モントレー水族館のメールアドレス獲得作戦

モントレー水族館がクラゲに関する詩や俳句を募集している。新しいクラゲ展示にあわせて開かれるパーティーに参加できるチケットがあたるらしい。


上の短縮URLをクリックすると下のページへ飛ぶ。


このページの末尾に「Sign up for our E-newsletter」があり、デフォルトでチェックされている。


FacebookやTwitterに何人のファンやフォロワーがいても、施設の投稿やつぶやきを彼ら全員が目にすることはない。なぜならFacebookやTwitterユーザの友人数やフォロワー数は平均するとどちらも約120人程度もいる。ユーザのFacebookやTwitterのタイムラインには、それだけのつながりから滝のような、豪雨のようなコンテンツが流れている。そのひとつひとつをスクロールダウンして見ているユーザなどどこにもいない。

ファンやフォロワー数が多いからそれだけの人数に施設側の情報・ニュース、コンテンツが届けられているということにはならない。そこを理解していれば、モントレー水族館のように、E-ニュースレターをデフォルトでチェックしておいて、個人に直接送り届けることができ、少しは目に触れる機会の多いメールも活用することになる。

ソーシャルメディアだけではなく、通常メールも加え、発信チャネルを多重確保しておかなければ情報クラッターの中でユーザにリーチすることなどできない。

ところであなたの施設はメールのニュースレターを定期的に出してますか?

2012年4月16日月曜日

スミソニアン博物館のクイズ

スミソニアン博物館が下のようにつぶやいていたのでアクセスしてみた。


「私は誰でしょうクイズの1」として、下の画像を見てそれは何かを当てるのだが、魚や鳥の英語名はちょっと手に余るなーと断念した。


ただし、上の画面右にある告知、「クイズに答えてスミソニアンの本をもらおう」、そして、「君に勝てそうな友達いる?やらせてみたら?」ということで、Facebook(シェア)とTwitter(ツィート)ボタンを配置しているのには感心した。

手持ちの在庫書籍をエサに、アクセスしたユーザの友人達にも「スミソニアン」の名前とクイズそのものを広めてもらおうという施策だ。

もうトップランナー達は、FacebookやTwitterに参加してあらゆる情報・ニュースを発信するだけではなく、ユーザ・利用者に参加してもらうためのプロモーションを企画・実施している。言葉は悪いが、あの手この手のやり手の営業マン的なアイディアを実行している。

それはソーシャルメディアというコミュニケーションチャネルが喧伝されているような魔法のチャネルではなく、レガシーメディア以上に手間暇がかかるメディアであり、単純に情報やニュース、コンテンツを発信するだけではユーザのリアクションが少なく、コンテンツが広まらないことを学習しているからだ。

ファンやフォロワー数がどんなに多くても会話、リアクション、RT、リプライ、ウォールへの投稿やコメント、シェア、いいね!が少なければ何の効果も、コンテンツの拡散にも結びつかない。

それよりもこういった敷居の低いクイズから入ってもらい、その体験を友人ネットワークに広めてもらう、地道な草の根施策こそ、会話を紡ぐことになる。長い道のりになることを理解していればこそ、普及・教育活動の一環としてやっていくことができる。

それを理解しないと単純に「いいね!」ボタンをWebにつけて、その多寡に一喜一憂することになってしまう。あるいは担当する学芸員の負荷が増えるだけでファン数やフォロワー数が増えないから無駄だとなってしまう。効果が見えないから止めようとなってしまう。

2012年4月13日金曜日

グリーンシーズン幕開けプロモーション

日本では積雪が多く、営業延長をアナウンスしているスキー場が多い。

ただ、桜前線が北上を続け、花見の映像や気温の上昇につれて初夏、そして夏を考え始める利用者のマインドからすると、いち早く、グリーンシーズンのプロモーションも合わせて行いたいところだ。

そのサンプルとして、米Whistler Blackcombのメールニュースレターがある。

「5月18日に予定されているマウンテンバイクのシーズン開幕まであと6週間を切りました」と書きだし、「まだ雪は残っていますが、除雪やコースの整備次第では早まる可能性もあります。TELUSワールドスキー・スノーボード・フェスティバルが終了するやいなや作業を開始するべく待機しています」と期待をあおっている。

新しいビデオもメールからリンクしている。

通常のWhistler BlackcombのFacebookとは別に開設されているWhistler Bike ParkのFacebookページのカバーフォトもメールニュースレターが発信され後に更新されている。
ウィンターシーズンの最後を飾るTELUSワールドスキー・スノーボード・フェスティバルを枕に、グリーンシーズン開幕を待ちわびるバイカー達をくすぐるコピーを並べ、彼らのマインドに「5月18日」を丸で囲わせている。

Whistlerのように年間を通して利用できるリゾートのメリットを活かしたプロモーションなので、スキー場として冬だけオープンしているリゾートにはうまく適用できないと思われるかもしれない。

しかし、冬だけの施設から脱しようと、パークゴルフ、ハイキングコース、バーベキューやキャンプ場などを春から秋にかけて運営している処も多いはずだ。

完全にシーズンが切り替わってからのプロモーションでは利用者のつながりを活用するのは難しい。Whistlerのように冬とその次のシーズンを折り重ねたプロモーションが、現行シーズン利用者をその次のシーズン利用者へと育成できる。

当然、今でも現行シーズン利用者に次シーズンの割引、クーポン券を配布しているはずだ。これと同じようにオンラインでも、今の利用者を次のシーズンにつなげるてやる必要がある。今の利用者だけではなく、彼らのオンラインネットワークはもうすでに無視できないほどに広がり、影響力は強いのだから。

さて、話は変わるが、WhistlerのTwitterでは上述したプロモーションと同期したツィートはされていない。Twitterを使い、毎日のように「オープンまであと何日、何週間とカウントダウン」してゆく手法があれば完璧になったと思う。

2012年4月12日木曜日

Google アートプロジェクトのメイキングビデオ

4月4日に「新しい共有チャネルとしてのグーグルプロジェクト」を書いたが、そのメイキングビデオが上っている。



へーっ、あるいは、なるほどといった感じだ。

フィーチャーされている足立美術館東京国立博物館はこのメイキングビデオをうまく使って、いままでのコミュニケーション・チャネル以外からのリーチを深められるはずだ。

是非ともこのビデオをエンベッドしてほしいなあ。

2012年4月11日水曜日

メトロポリタン美術館のソーシャルメディア対応

いつ頃からメトロポリタン美術館のWebサイトでサービスが始まったのかは分からないが、MyMetというサービスがある。

 このサービスは何かと言うと、収蔵作品のページ中ほどにある、「Add to MyMet」をクリックすると、
 自分の「MyMet」に保存してくれるサービスだ。
メトロポリタン美術館のWebにアクセスするたびに検索したり、ギャラリーや展覧会を探さなくても、お気に入りの作品を自分の「MyMet」でいつでも鑑賞することができるサービスだ。

ま、どこのWebサイトやサービスにでもあるマイページなのだが、メトロポリタン美術館はそれだけで終わっていない。

「いろんなユーザが作った「MyMet」をもっと大勢の人達と共有するスペースを提供しましょう」、ということで、一番上にあげた「What's Your Met?」というセクションで毎週の特集エントリとして取上げ、掲載します。だからメトロポリタン美術館のWebへアクセスした大勢のユーザにも露出し、あなたも有名になれるかもしれません。

MLBニューヨークヤンキースのアレックス・ロドリゲス、NBAニューヨーク・ニックスのカーメロ・アンソニー、シンガーソングライターのアリシア・キーズがMyMetを公開していますが、彼らのようなセレブ達と肩を並べることができるかもしれませんよ。しかし、応募するには、いろいろ決まりごとがあります、という仕組みをとっている。

ポイントはFacebook、Twitter、Pinterest、Flickr、Tumblr.、Instagramを使って応募者の友人・知人、つながっているユーザに告知、露出してくださいということだ。 (なお、Facebookのアプリは動かないようなので、このサービス、あるいはコンテストは3月以前からやっていたようだ)

追記(2012/4/18):
投稿当時、Facebookアプリへのリンク、Facebookページでのアプリは動かなかった。それを @metmusem へ伝えたところ、2日後には使えるようになった。

美術・博物館が、一般的なユーザの日常のオンライン生活で顔を出す可能性は低い。だから、美術に興味を持っているユーザをあおり、彼らの友人・知人ネットワークにメトロポリタン美術館を出してもらおうと言う施策だ。出してもらったご褒美として、特集エントリに掲載しますよ、ということだ。

誰が情報・コンテンツの出し手であり、それを共有しているのが誰かが分かっていないとこういった施策は打ち出せない。

美術・博物館の収蔵品は、そこにあるだけでは日の目を見ない死蔵品であり、美術・博物館がいくら予算をかけて露出してもたかが知れている。その予算枠以上に収蔵品、コンテンツを世の中に露出してくれるのはちょっとしたユーザ達の力とつながりだ。

そして、それを実行するには、美術・博物館の体制、理解が問われるが、メトロポリタン美術館は少なくとも、それを実行に移すだけのものはあったということだろう。

これまでの100年間に行われてきた施策と180度違う施策が求められている。そのひとつは、ユーザの力を借りることだ。

2012年4月9日月曜日

美術・博物館へ行く世代対策?

先週、イオンの次世代型SCの話から美術・博物館へ足を運ぶ人たちが年齢によって変わってくることをツィートした処、RTなどのちょっとした反応があったので
グラフを追加しておいた。
もう少し詳しく説明すると、米国の美術・博物館協会のWebサイトで見つけた資料がある。

これはNational Endowment for the Arts(米国芸術振興基金とでも訳すのかしら?どなたか日本語訳をご存知の方、ご連絡ください)が20011年に出している「Age and arts participation: A case against demographic destiny」という調査レポートで、ジャズやクラシックのコンサート、オペラ、ミュージカル、演劇、バレー、その他のダンス、美術・博物館などをベンチマークイベントとして、行ったことがあるかないか、行ったことがあればその回数などを年代、世代コホート別に調査、分析したものだ。

まず、年代ごとに参加したベンチマークイベント、参加イベント数、参加イベントのパーセントインデックスを出している。45-49歳を境にして、いずれもインデックスは年を追うごとに下がってゆく。
この傾向を裏付けるものとして、非耐久消費財の支出がある。20代、30代から増え始め、40代に頂点を迎え、50代に入るや年老いるごとに減ってゆく。
これは日本でも同じだろう。子供に金のかかる年代を過ぎると、後は定年を迎え、65歳からいくらもらえるか分からない年金をあてにするわけにもゆかず、財布のひもをギッチリと押さえこむのは50代以降になる。

いや、米国よりもこれから消費税が増税され、各種社会保障費が減らされそうな日本の方が、その締めつけ方はきつくなるはずだ。

趣味・嗜好に使う金があるなら、貯蓄に回したり、孫にブランド品を買い与えるほうがよっぽどましだと考える中高年は多い。わざわざ、記憶にも残らず、20~40代をターゲットにしたとしか考えられない展覧会、個展に行ってなんのメリットがあるんだと、はき捨てるオジサン、オバサン達は多いはずだ。

さて、話を米国にもどすと、ベンチマークイベントの中で、美術・博物館へ足を運ぶ人たちは一番多い。
出典:米国美術・博物館協会

米国で人気のミュージカルやジャズ、演劇、クラシックを差し置いて、美術・博物館通いをする人の比率は一番高くなっている。

だから美術・博物館は安泰だと言う話にはなっていない。なぜなら、もうひとつの別な調査、「2008 Survey of Public participation in the Arts」があり、それには前回の2002年に比べると2008年時点では、過去12カ月間に美術・博物館へ足を運んだ人が5%ポイントも減っているという事実があるからだ。
出典:米国 National Endowment for the Arts

この調査があるからこそ、「Age...」という調査を行って、どうしたらいいのかを探ったわけだ。

National Endowment for the Artsと同様に、年代ごと、コホート世代ごとの傾向と対策を練り、例えば、「拡大するシニア市場を狙うイオンの次世代SC」というケースもある。

出典:ダイヤモンドオンライン

しかし、National Endowment for the Artsが、「Age...」調査から導き出したのは、中高年対策というよりは別物だった。

それは長くなるので日を改めて別に書くことにします。

2012年4月6日金曜日

テート美術館のソーシャルメディア・コミュニケーション戦略

テート美術館は、2011年に2011年-2012年のソーシャルメディア・コミュニケーション戦略を公開している。

前文によると、
テートオンラインの目的は、英国および世界の現代美術の理解を深めるというテート美術館のミッション完遂を支援すること。テートオンラインは急速に拡大し、可能性の大きなデジタルコミュニケーションを背景として、新しいやり方で新しいオーディエンスにリーチし、エンゲージする。

テート美術館を体験するオーディエンスを確保し、育成し、その幅を広げたい。現在の利用者から将来の新しいオーディエンスを育成したい。特に、より幅広い若年層にフォーカスしたい。
そうだ。

次に現状認識を挙げている。
近年の大変革(ブログ、Flickr、YouTubeなどの自己発信、Facebook、Twitterなどのソーシャルネットワーキング)が、ユーザとの相互やり取りをもたらしている。

それによりユーザは、デジタル、ソーシャルメディア(スペース)においてコンテンツが提供されることを当然のことだと期待している。

ソーシャルWebを使い、文化施設自身がオープン化することで、広範なオーディエンスとの会話の道を開き、エンゲージメントや相互理解をもたらすことができる。
だから、ミッション・ステートメントを踏まえた上で、テート美術館は、コンテンツへのアクセス及びオンラインでの人対人のコンタクトを求めるWebユーザのリクエストに応えるため、彼らが集まっているスペースでコンテンツをオーディエンスに提供する。

としている。

そして、ゴールを設定している。それも12ものゴールを設定している。
  1. 文化面での世界最先端のソーシャルメディアプラットフォームになる。
  2. 現在のオーディエンスと革新的な方法でエンゲージし、新しいオンラインコミュニティを構築する。
  3. 美術館内部の多様な意見とコミュニケートする。
  4. オーディエンスがアクティブなオンラインにおいてコンテンツを提供する。
  5.  テート美術館のWebサイトへトラフィックを誘導する。
  6. 国内ユーザの来場を促進する。(オンラインコミュニティの60%は海外、国内は40%)
  7. ソーシャルメディアチャネルを通常のマーケティングチャネルに統合する。
  8. 多様な収入ストリームからの販売増を目指す。
  9. ファンがテート美術館をアドボケートすることを促進する。
  10. 新しいオーディエンス層を開拓する。
  11. テート美術館の重要な戦略メッセージの認知を増加する。
  12. 他施設との連携によりテート美術館のオンラインフォロワーを増やす。

そして、ソーシャルメディア戦略を評価するための指標を定めている。
  • テート美術館のソーシャルメディアとエンゲージするユーザ数を増やす。
  • ソーシャルメディアからテート美術館Webサイトへのリフェラル数を増やす。
  • ソーシャルメディア戦略の結果として、来場者数を増やす。
  • RT、いいね!、シェアしたオーディエンスのアドボカシーを計測する。
  • テート美術館内でのソーシャルメディア利用を増やす。
  • ソーシャルメディアユーザのデモグラフィックスを可能な限り分析する。
  • コンテンツのタイプごとにその効果を計測する。

他にもいろいろとあるが、これだけで十分だろう。

それにしても、ここまですごいミッション・ステートメントを見たことがない。名にしおうIT企業でも、世界最先端のプラットフォームになるとまで書き込んでいるステートメントはないだろう。

AlexaからTate.org.ukへの流入トラフィックを見ると、Facebook、Wikipedia、t.co(Twitter)、Alexa、YouTubeなどからのトラフィックシェアは18%を越えている。
出典:Alexa.com

Momaでも約13%だったソーシャルメディアスペースからの流入トラフィックが18%を越えているということは、ミッション・ステートメントに書き込まれたゴールに近い位置にまで来ていることを伺わせる。

彼我の差は途方もなく大きく感じられるが、埋められない差ではないと思う。もし、この現状認識を共有することさえできれば...。

2012年4月5日木曜日

プラド美術館との双方向会話

昨日、グーグルアートプロジェクトに関する記事を書いた後、プラド美術館に「プロジェクトに参加する予定は?」とツィートしてみたところ、返事があった。

今のところ予定はないようだが、それに代わるサービスを紹介してくれた。

それがプラド美術館のオンラインギャラリーだ。
Goyaを検索すると、120作品も出てきた。 全体で5,000作品以上がHDで見ることができる。

それに加えて、グーグルアースを使えば最大14ギガで記録した所蔵の14作品を見ることもできるサービスも紹介してくれた。
こんなコミュニケーションが簡単に取れるツールとしてTwitterが存在している。

ここにあるのは双方向コミュニケーションであり、広報や学芸員からの一方向コミュニケーションではない。

Tweetstats.comによると、@museodelpradoのツィートのうち53%はリプライになっている。そのリプライした回数の上位10ユーザが下図だ。これはどういうことかというと、2009年2月から開始して今までにツィートした4,114件のうち、2,192件が他ユーザへのリプライになっているということだ。
出典:Tweetstats.com

多くのTwitterユーザが@museodelpradoへ質問したり、話しかけたり、引用している数は数万、数十万かもしれない。その中で、@museodelpradoはそれらを放置せず、可能な限り返事を出して対応していることになる。それもスペイン語だけではなく、英語はもちろん、多分、仏、独語のツィートにも対応しているのではないだろうか。

Webからの情報提供はもちろんのことで、美術館の(潜在)利用者が利用する様々なコミュニケーションチャネル、FacebookやTwitterを活用してWebと同じ単なる情報提供という一方通行のコミュニケーションをするのではなく、双方向のコミュニケーションを行うことが求められている。そうすることで会話が成立し、その会話者の友人ネットワークにも会話の内容、コンテンツが露出する。そして、露出したコンテンツをもとに新たなチャネルが美術館へとつながってゆく。

日本からの問合せだと@museodelpradoは分からなかったろうが、それにも対応したことでブログで取り上げられ、ひょっとしたらそのブログを見たユーザが...という、一種の風が吹けば桶屋が儲かる的な話が成り立つ可能性が高い。


当然、人員、予算など多くの障害があるし、すべてに対応できるわけでも、その効果をどこまで可視化できるかは分からない。しかし、ユーザが活動しているスペースに顔を出すだけではなく、双方向会話を行わない限り、コミュニケーションに参加も、話題に上ることさえ難しい世の中になってきていることをプラド美術館は理解している。

日本にも会話している美術館・博物館、動物園・水族館は多いが、もっと沢山あってほしい。

2012年4月4日水曜日

新しい共有チャネルとしてのグーグルアートプロジェクト

ニューヨークの近代美術館が下のツィートをしていた。
リンクをたどってグーグルアートへアクセスしてみた。

Momaは151コレクションと書いているが、数えてみると多分155の美術館や博物館が参加しているようだ。また、Momaは46としているが、50の美術館・博物館内をストリートビューできるようになっている。

日本からは足立美術館ブリヂストン美術館大原美術館サントリー美術館東京国立博物館国立西洋美術館が参加していた。

素晴らしい作品をPCの前にいながら鑑賞できるのはすごいことだ。行ったこともない美術館のあちらこちらを探索するのはとても楽しいし、この美術館にこんな作品が収蔵されているのかと驚くこともある。また、いろいろな作品を集めてきて自分のギャラリーを作ることもできる。そんな楽しさもある。

このグーグルアートプロジェクトは、2011年2月に発表されているように世界の有名な美術館17館と協力し、1000作品以上をオンラインで鑑賞できるようにしたもので、その時から館内のストリートビューも使えていた。

出典:グーグルアートプロジェクト

そんなプロジェクトが本格的に始動し、内容を充実させてきたようだ。

でも残念なのは、折角、グーグルと協力してコンテンツ制作を行った美術館・博物館からそのアナウンスが聞こえてこない。

MomaだけがせっせとFacebookやTwitterで発信し、Facebookでは576人がいいね!、292人がシェアし、21人がコメントを書き、Twitterでは50人以上がRTし、25人がお気に入りにしている。そしてアクションを起こした彼らの友人ネットワークには何千、何万というユーザ達がつながっている。

このオンライン体験やコンテンツ共有は、今までの美術館・博物館での体験とは違う新しい共有チャネルができたということになる。ここから、リアルな美術館・博物館への誘導、来場を考えることができるだけに、是非、この新しい共有チャネルを活用してほしい、と思います。

2012年4月3日火曜日

年パス販売のヒント

もうそろそろスキーシーズンも終わりを迎えようとしているので、各地スキー場から今シーズンの営業終了を告げるお知らせやツィートが飛び交っている。

当然、米国でもスキーシーズンは終わりになりつつあるのだが、マンモスマウンテンから届いたメールレターは一味違っている。
(下はメール本文だが、クリックするとWebページのMVP年パス・プロモーションページへ飛ぶようにしている)
このニュースレターは、2012/2013年シーズンの年間パスポートの販売開始をアナウンスし、MVPチケットを買えば宿泊割引、特別イベントへの参加、サマーシーズンの特典、ゴルフフィー割引等がつき、来シーズンの指定日は一般利用者よりも1時間前からリフトに乗れるという特典もありますとリストアップしている。

ここまでは当然至極のプロモーションなのだが 、目をひくのは、このパスを買うと、今シーズンの4月15日からメモリアルデー(5月第四週月曜日)までの6週間分もおまけで滑れちゃうという特典付きですよと伝えている。

マンモスマウンテンは、来シーズンの年間パス販売をアナウンスするだけではなく、残り少ない今シーズンでも利用者の注意を喚起し、それこそ乾いたタオルをそれでも絞る的なプロモーションを行っている。

この特典は、4月25日の秘書の日、5月13日の母の日、5月19日の軍隊の日、5月28日の戦没将兵追悼の日にどうしようかと考えているホリデーメーカーの心に刺さるプロモーションとなるはずだ。

この商売人根性には感心させられるし、見習わなければならないなと思う。

2012年4月2日月曜日

新Facebookページの功罪

4月1日からFacebookのデザイン・レイアウトが変更されたので、どちらの企業、施設も対応されていると思う。下は、米、ボルチモアのThe National Aquariumが運営しているFacebookページ。
変更の中でもタイムラインが最も大きなもので、多くの記事やブログが説明しているのでそれはそちらにお任せするとして、それ以外のポイントとして、「ハイライト」がある。

3月以前であれば、ページのウォールには「ページオーナーの投稿」、「すべての投稿」といった分類表示が明示されていた。ページにアクセスしたユーザは二つの分類があることを理解し、そのいずれかを選んで表示させていた。「すべての投稿」を選択すると、ページオーナーとファンの投稿が混在した形で見ることができた。同じ時間の流れの中で、ページオーナーの投稿やファンの投稿の両方を見ながら、ページやファンの投稿に対して、コメント、いいね!、シェアすることができた。

しかし、4月以降は、「ハイライト」が表示されるだけなので、少なくとも当初はどういった分類表示が可能なのか、ハイライトをクリックしない限りわからなくなった。また、分類表示を理解してもハイライトのデフォルトは、「ページの投稿」のようなので、「他のユーザーの投稿」をクリックしない限り、ページに投稿された他ユーザの声がすぐには見えてこない。今までよりもファンの声がページへアクセスしたユーザに伝わりにくくなるように思える。

反面、ページオーナーにすれば、いままでとは違い、ファンの投稿との混在表示はなくなったので、雑音なしにページオーナーのタイムフレーム、ストーリー通りに投稿を見てもらうことができるようになった。企業や施設といったページオーナーの広報面から見ると、今までより以上にオーナーの声、聞いてもらいたいこと、知ってもらいたいこと、やってもらいたいことを直接、ファンやその他のユーザに伝えることができるスペースになったといえる。


ところで、このままでは「他のユーザーの投稿」の露出、訴求、共有パワーが落ちてしまわないだろうか?

Facebookページは、1)ページオーナーがファンや他のユーザとコミュニケーションを行うスペースで、2)そのページでファンや他のユーザ同士がコミュニケーションを行うスペースでもあり、また、3)そのユーザ同士のコミュニケーションにページオーナーが参加するスペースだ。

ページへアクセスしたときのデフォルトが「ページの投稿」になり、「他のユーザーの投稿」が「ページ(オーナー)の投稿」と同時表示されなくなってしまうことで、今まで以上に、1)の機能が強調されてしまい、反面、2)や3)としての機能が落ちるのではないかと思える。

その不安を払しょくしようと努力しているのが上に挙げたThe National Aquariumだ。

The National AquariumのFacebookページを見ていると 、今年の1月、2月、昨年の12月、11月にオーナーとして他ユーザの投稿にコメント、いいね!、シェアしたケースは見られない。そして多分、それ以前も対応していなかったと思う。それは、ページオーナーが他ユーザに対して投稿やコメント、いいね!、シェアしなくても、ページオーナーと他のユーザの投稿が同時表示されていため、ゆるやかであっても、つながりのあるコミュニケーションが行われていたためではないだろうか。下は2月の「他のユーザーの投稿」画面。
しかし、3月1日にFacebookが4月からの強制タイムライン化を打ち出すと、3月には69件の「他のユーザーの投稿」に対して、29件のコメントなどを行っている。下は3月の「他のユーザーの投稿」画面。The National Aquariumの青いプロファイルアイコンが3つ見える。
突然、「他のユーザーの投稿」に対してページオーナーのThe National Aquariumが対応するようになった要因のひとつは、オーナーと他ユーザ投稿の同時表示がなくなったことではないだろうか。

もちろん、3月から新しい担当者が加わり、積極的に対応しましょうとなっただけかもしれない。また、対応を必要とする何らかの事件、イベント、リクエストがあったのかもしれない。

しかし、2)ページでファンや他のユーザ同士がコミュニケーションを行うスペース、3)そのユーザ同士のコミュニケーションにページオーナーが参加するスペースとしてのFacebookページを運営してゆくにあたり、強制タイムライン化によるファンスペースにおけるページオーナーとファンやユーザとのコミュニケーション低下を危惧すればこその対応だと思う。

「ページの投稿」表示でいくら、コメントやいいね!、シェアが集まろうが、「他のユーザーの投稿」表示に活気がなく、盛り上がらず、投稿数が減っていくことを避けるには、あるいは 「他のユーザーの投稿」と「ページの投稿」を結びつけるためには、The National Aquariumの行動が正しいと思うが、皆さんはどうお考えでしょうか?

しかし、一方で、ウォールへの投稿を禁止して、ページオーナーからの投稿を閲覧させるだけというアプローチをとる企業・施設も存在する。こうした場合、Facebookを広報チャネルのひとつとして最大活用するだけなので、「他のユーザーの投稿」に一喜一憂する必要はない。「ハイライト」をクリックしても「他のユーザーの投稿」は受け付けていないので表示されない。The National Aquariumのページにある、「メッセージ(ファン、ユーザからページオーナーへのメッセージを発信することができる)」を表示する必要もない。
あなたの企業、施設がとるべき対応はどちらがベストなのでしょうか?