2012年6月14日木曜日

入場者数世界トップ5美術館のTwitter対応

日本の美術・博物館の入場者数トップ5と、世界のそれをTwitterにおける対応で比較してみようとしたが、日本は国立新美術館しかTwitterをやっていないというお寒い現状があるので、比較と言うよりは欧米の現状を見てみた。

The Art Newspaperによるとルーブル、メトロポリタン、大英、ナショナルギャラリー、テートが2011年に世界トップ5の入場者数を誇る美術館だ。 同年、東京国立博物館が163万人で22位、国立新美術館が68万人で80位となっている。
本格的に開始したのが2011年6月のルーブルが少ないのは当然だが、それ以外の世界のトップ5はよくツィートしている。2009年のはじめから開始したメトロポリタン、大英博物館、テート、2010年5月からのナショナルギャラリーにしても数千回レベルだ。

メトロポリタンは5.3回ツィート@日でトップ、テートは4.5回、ナショナルギャラリーが4.3回、大英博物館が3.2回、ルーブルは2.3回だ。メトロが今後も他館をツィート回数で引き離してゆくのは間違いない。(このツィート回数には、リプライ、リツィートも含まれる)

また、各館ともに千人、数百人規模でフォローし、フォロワーはテートが65万人、メトロが46万人。この2館が頭二つ以上抜けている。この2館は「お気に入り」も多く、テートはちゃんと「リスト」も使っている。

テート美術館は「ソーシャルメディアコミュニケーション戦略」を公表し、「文化面での世界最先端のソーシャルメディアプラットフォームになる」というゴールを設定しているだけに、当然も当然だろう。

参考:テート美術館のソーシャルメディアコミュニケーション戦略

その点、メトロポリタン美術館はどうかというと2011年12月ごろ、オンラインコミュニティマネージャを募集していた。何をやるかというと
  • Facebook、Twitter、Flickr、FourSquare、Tumblr、その他のソーシャルメディア・コミュニティを管理、プロジェクト企画・運営・報告
  • ファン、トラフィック、エンゲージメント増加策企画・実行
  • Blogコメント管理・対応
  • SEO対応コンテンツ制作、トラッキング、モニター、対応
  • ユーザフィードバック入手・対応、オーディエンス・レベニュー増加策企画
  • 統計分析
  • コミュニティを管理し、その声となり、ユーザと美術館ステークホルダーの仲介をする
などだ。 そして、求められる経験は、
  • ソーシャルメディア、SNS、ニューメディアトレンドの理解
  • プロジェクトマネージメント経験、Web制作、HTMLおよびPhotoShop操作
  • emailおよびチャネルマネージメント実績
  • 4年以上のオンラインマーケティングあるいはオンラインジャーナル発行経験
となっていて、B.A.と美術界での経験も必須となっている。

まるでIT企業のソーシャルメディアマネージャの募集のようだ。ここまで詳細に業務や経験を並べている求人も少ないのではないだろうか。そんな求人を美術館であるメトロポリタンがしていた。

出典:M&T Online Community Manager - Metropolitan Museum of Art

2011年10月には、10年ぶりにWebサイトをリニューアルしているし、MyMetというサービスもやっている。積極的にソーシャルに出張ってエンゲージメントを拡張しようとしているからこれも当然か。

参考:メトロポリタン美術館のソーシャルメディア対応

さて、フォローやフォロワー数よりも重要なリプライとリツィート率・数を見ると、さすがのテートが合計で45%以上、大英博物館が39%、メトロポリタンが38%、ナショナルギャラリーが33%。まだ1年目のルーブルでも約15%だ。
言いっ放しのメガフォンマーケティング手段としてTwitterを使っているところはなさそうだ。

質問や意見に対応し、会話に参加し、価値のあるツィートを自分のフォロワーに共有することをどこもやっている。 言いっ放しにせず、コミュニティを育成し、美術館へのロイヤルティ向上を目指すには、コミュニティメンバーの声を聞き、意見・苦情に対応しなければならない、ということを理解している。

言いっ放しでもネームバリューだけで相当数のフォロワーがつきそうなテートやメトロポリタンでさえ、地道にエンゲージメントを行っている。だからこそ65万とか46万人といった数を積み上げることができたのだろう。

自分や郷土に関するツィートをボットに拾わせて、自動的にリツィートさせているどこかの国のどこかの美術館とは大きな違いだ。

参考:あまり推奨しないTwitterマーケティング施策

そして、アウトリーチのプロ、エンゲージメントのキュレーター、ソーシャルメディアPRのプロを募集している美術館や水族館を見ると、メトロポリタンだけではなく世界のトップ5は当然、すでにずっと前から手を打っているんだろうなと思わされてしまう。
出典:NowHiringToday

このまま現状維持を続けていてはエンパワーされたオーディエンスに取り残されるという危機感があるからこそ、入場者数世界トップ5の美術館はもちろんのこと、その他の美術館、水族館もオーディエンスにキャッチアップするためにオンラインコミュニケーション、そしてエンゲージメントを進めている。ミュージアムは生き残るためにエンゲージメントから信頼を獲得しようとしている。

そのために、コミュニケーションスキルを持った人材を集め、あるいは内部で教育し、コミュニケーションの大前提である相互信頼を世界のトップ5が獲得しようとしている、というのがTwitterを含めたソーシャルメディアサービス・ツールの現状だろう。

同じ危機感がありますか?
言いっ放しのメガフォンマーケティングでフォロワー数やファン数を増やすことが目的ですか?
リプライやリツィートから相互信頼を獲得することを考えたことがありますか?

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