2012年6月11日月曜日

集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1

ちょっと古くはなるが、2009年度のレジャー・集客施設の入場者数ランキングが綜合ユニコム株式会社から出ている。各カテゴリごとに入場者数トップ5までの施設を出している。

そこで、そのランキングを元にしてTwitterに関する数字をまとめたのが下図になる。
出典:総合ユニコム株式会社 ニュースリリース (pdf)

どのレジャー・集客施設も、基本的にイベントやアトラクション、最新ビデオや画像の告知・案内、ブログ更新を中心としたツィートを行っている。

7つのカテゴリの中で最もTwitter対応が進んでいるがファームパークでトップ5中の4施設が対応済みだ。その次はテーマパークが3施設、遊園地や水族館が2施設、 フラワーパークとミュージアムが1施設で、まったく対応していないカテゴリが動物園となっている。

さて、35施設中、Twitter運用を行っている所は13施設に限られている。その13施設中で9施設しか他のTwitterユーザをフォローしていない。お気に入り機能を使っている所は2施設、リストを使っている所は4施設だ。どの施設もツィート以外はあまり活用していないようだ。

ノート:
  • お気に入り
    他ユーザのツィートをメモ的、備忘録的にチェックしておくことができる。お気に入りに入れたツィートをしたユーザにはメールが送信されるので、誰が自分のどんなツィートをお気に入りにしたのかが分かる。ただし、Twitterは毎回メールを送ってくるわけではないようだ。
    さて、お気に入りを使っていないということは、1)使い方を知らない、2)他ユーザのツィートを見ていない、3)その他の理由が考えられる。
    お気に入りを使っていない施設は、多分、1)と2)が大半だろう。
  • リスト
    10人程度のユーザをフォローし、全部合わせて1日に100件程度のツィートだとすると、毎日チェックすることもできる。しかし、100人、1000人をフォローしている場合、そんなことは無理だ。そこで、カテゴリ分けをして毎日チェックすべきユーザや、特定のテーマごとにユーザをグループ分けして特定グループ(リスト)のユーザのツィートを見ると効率よく、見逃すことなくチェックすることができる。
    さて、リストを使っていないということは、1)使い方を知らない、2)他ユーザのツィートを見ていない、3)その他の理由が考えられる。
    リストを使っていない施設は、多分、1)と2が大半だろう。
  • お気に入りやリストを使っていない施設
    は、大半が使い方を知らないのだろうが、ユーザの声を聞いてない、聞いていたとしても対応しないというケースもあるだろう。
    それは、Twitterからの広報告知が目的で、ユーザ・利用者の声を吸い上げる、あるいは、アクティブサポートを行う体制ではないからだ。

    さて、一方通行のコミュニケーションチャネルとして、昔ながらのニュースリリースや告知・案内を流しているだけで、顧客・利用者・ユーザとの会話を目的としたものではないことがTwitterユーザに分かる日はすぐ来ると思う。

さて、次に、施設別に見ると、東京ディズニーランド・シーがダントツで28万人以上のフォロワーを抱えている。 ただし、USJはこのランキングに入っているレジャー・集客施設中、最も多い3,800回以上もツィートしているし、2万人以上もフォローしており、2指標でトップということになる。

いや、東京ディズニーランド・シーのTwitterがダントツの影響力を持っていると思われる向きもあるだろうが、上で説明したようにフォローしているユーザ数が多い場合、タイムラインをツィートが流れてゆき、個々のツィートを確認することなど不可能に近い。facenaviによると、日本人ユーザの平均フォロー数は325人だ。このフォローしているユーザの中から特別なアカウントをリストに登録して、それを見ているユーザはどれくらいいるのだろう。東京ディズニーランド・シーをフォローしている28万人のうち、何%がツィートを見ているのだろう?

出典:facenavi Twitter日本人ユーザー・データ調査

そこで、TweetStats.comを使って、各アカウントがどのようなツィートを行っているかをもう少し詳しく見たのが下図になる。(リプライには、アカウント名を先頭につけたツィートと、アカウント名が文中にくるツィートも含まれる)
リプライもリツィートもしていないのは、東京ディズニーランド・シー、海遊館、マザー牧場、国立新美術館、そして、リツィートはしているがリプライしていないのがナガシマリゾートということになる。(ナガシマリゾートは施設の情報更新を行うボットだと明記しているので、リプライはせず、マニュアルで2回リツィートしたようだ)

その中で1人のユーザもフォローしていないのが、東京ディズニーランド・シー、海遊館、国立新美術館だ。

フォローされたからフォロー返しするといった単純な構図もあるが、価値のあるニュース・情報・コンテンツを提供してくれるアカウントをフォローする場合、先方がこちらをフォロー返ししなくても別に気にはならない。だから、1人もフォローしていないアカウントも成立する。

しかし、リプライやリツィートはちょっと違う。

レジャー・集客施設のほうで「リプライ」はしませんと明記している所以外、リプライは個別ユーザのツィートに対して返信したり、なんらかの発信内容に個別ユーザのアカウント名を入れたツィートを発信することになるので個別ユーザ対応をしてくれることになる。リツィートは自分のフォロワーに対して個別ユーザのツィートを共有することになるので、その価値を認めたことになる。いずれも顧客・利用者・ユーザの個別対応や彼らのツィートをチェックしていなければできない作業だ。

自分のツィートに対してちゃんとリプライしてくれるのは当然うれしい。そして、「なんらかの発信内容に自分のアカウント名を入れたツィートを発信」された側からすると、ちゃんと自分のことを覚えてくれていることが分かり、これもまたうれしい。

リツィートされたユーザ側から見ると、レジャー・集客施設が抱えている何万人、何10万人というフォロワーに自分のツィートが共有されたことになる。もう、天にも昇る気持ちになる。自分のフォロワーも少しは増えるかと期待するし、リツィートしてくれたレジャー・集客施設に感謝の気持ちが一杯になる。今まで以上のロイヤルユーザになってゆく。

そしてリプライやリツィートされた側は、それを引用したり、リツィートすることで自分のフォロワーに施設との会話を共有してくれる。自分だけではなく、レジャー・集客施設も含めて。

こういったこと、個別ユーザ対応やロイヤルユーザの育成、そしてレジャー・集客施設の露出拡散を排除しているのが、リプライもリツィートもしていないレジャー・集客施設ということになる。


先ほどツィートおよびフォロー数でトップだったUSJだが、リプライが44%、リツィートが14%、3,823回のツィート中58%が他ユーザへのレスポンスとなっていて、USJが各種プロモーションやアトラクション案内をイニシエートしたのは42%(1,609回)となる。リプライ率、リツィート率ともに2位だ。

以下のようにリプライあり、リツィートあり、楽しい会話が成立しているのが見て取れる。
もうひとつ、富士急ハイランドもリプライが46%、リツィートが28%、1,505回のツィート中74%が他ユーザへのレスポンスとなっていて、各種プロモーションやアトラクション案内を行ったのは26%(379回)となる。富士急ハイランドはリプライ率、リツィート率ともに1位だ。

こちらはフォローしたユーザへのフォロー返しを伝えたり、体験を送ってくれた利用者に本当に楽しげに返信している。
リプライやリツィートの面で考えると、USJや富士急ハイランドのTwitterアカウントのほうが、顧客・利用者・ユーザの体験価値を認め、自身のフォロワーに共有している。個別ユーザ対応を行い、ロイヤルユーザ育成を着実に行っていると見える。

レジャー・集客施設のツィートを見てくれているかよく分からないフォロワーを沢山抱えているよりは、個別ユーザ対応や、ロイヤルユーザ育成を行っている方が、コミュニケーションとして成立していると思える。

また、コミュニケーションが成立しているとすると、レジャー・集客施設の露出拡散という面からこの2施設は、フォロワー数だけで判断できない効果を上げているはずだ。

よく、「フォロワー数が1,000を超えました。ありがとうございます」といったツィートを見かけるが、本当に評価、モニターすべき指標は、リプライやリツィート率・数、そして個別ユーザの引用・リツィート数だということになる。(ただし、これを計測するのは難しい)


最後に、集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1としてまとめると、
  1. レジャー・集客施設のTwitter対応はまだこれから
  2. 既存のレガシーコミュニケーションの手法をそのまま応用したTwitter活用が目立つ
  3. ソーシャルメディアというオープン、双方向、対等なコミュニケーションチャネルとしてTwitterを活用するという理解ができているのはごくごく少数派
  4. 個別ユーザ対応、ロイヤルユーザ育成を実行できているのはごくごく少数派
  5. 効果指標として、フォロワー数ではなく、リプライ・リツィート率・数を見ている所はいない(かもしれない)
  6. 発信するニュース・情報・コンテンツのキュレーションができていない
ということになる。

6に関しては今回書いていないが、これが本当に肝になる所なので、別途書くことにします。

さて、集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その2(Facebook)に関しては次回(書くかも...)

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